国内最大のマラソン大会ー東京マラソンーが先週行われた。
東京五輪で日本代表として6位入賞を果たした大迫傑選手が現役復帰後初の国内レースに参戦するということで、例年以上に注目を浴びたレースだったのではないでしょうか。
また、MGCやパリ五輪も間近に控えているということで、国内ではマラソンブームだけでなく、陸上業界全体としても熱気が増されています。
今回は、東京マラソン2023の結果と活躍した選手の走りについて比較をまとめていきたいと思います。
東京マラソンの注目ポイント
2023日3月5日に開催された東京マラソンですが、主な国内招待選手は以下の選手でした。
日本記録保持者の鈴木選手や大迫傑選手、またアジア大会金メダリストの井上選手など有名どころの選手も多く出場するなど、非常に注目の高い大会となっております。
≪国内招待選手≫
鈴木健吾 所属:富士通 自己ベスト:2:04:56 |
大迫傑 所属:Nike 自己ベスト:2:05:29 |
土方英和 所属:旭化成 自己ベスト:2:06.26 |
細谷恭平 所属:黒崎播磨 自己ベスト:2:06:35 |
井上大仁 所属:三菱重工 自己ベスト:2:06:47 |
吉田祐也 所属:GMOインターネットグループ 自己ベスト:2:07:05 |
其田健也 所属:JR東日本 自己ベスト:2:07.14 |
小山直城 所属:Honda 自己ベスト:2:08:59 |
持ちタイムが2時間4分台~6分台の選手も出場することから、当初の予定では、鈴木選手や大迫選手、若手の土方選手などが先頭争いをして、ハイスピードな高速レースになるのではという予想がされていました。
しかし、鈴木選手が大会直前に右脚股関節故障をしたことにより欠場となったため、レース展開が読めないような状況となりました。
そのため、現役復帰後初めての国内レースを迎えた大迫選手がどれだけ良いパフォーマンスをするかという点が、大きな注目点になったかと思います。
東京マラソン2023結果
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東京マラソン2023の結果は下記のとおりです。
優勝タイムが2時間5分台と例年と比べると少々タイムが劣りますが、上位選手についてはペースの上げ下げなどが各所で見られ、とてもタフなレースだったのではないでしょうか。
総合順位 | 選手 | タイム |
優勝 | デソ・ゲルミサ(エチオピア) | 2時間05分22秒 |
第2位 | モハメド・エサ(エチオピア) | 2時間05分22秒 |
第3位 | タイアス・キプルト(ケニア) | 2時間05分25秒 |
第4位 | T・ゲタウェウケペデ(エチオピア) | 2時間05分32秒 |
第5位 | キャメロン・レビンス(カナダ) | 2時間05分36秒 |
第6位 | デメダドゥ・アバテ(エチオピア) | 2時間05分38秒 |
第7位 | 山下一貴(三菱重工) | 2時間05分51秒 |
第8位 | 其田健也(JR東日本) | 2時間05分59秒 |
第9位 | 大迫傑(Nike) | 2時間06分13秒 |
第10位 | 井上大仁(三菱重工) | 2時間07分09秒 |
日本人選手の結果は?
日本人トップは25歳の山下一貴(三菱重工)選手となりました。
2時間5分台という、日本人選手にとってはレベルの高いレースとなりましたが、山下選手が終始粘り強さを見せ、序盤から上位争いをしていた大迫選手よりも上位でフィニッシュしました。
山下選手は全体10位の井上選手と同じく三菱重工に所属し、マラソンに力を入れて練習に取り組んだ成果が発揮されました。
また、日本人2位は其田健也(JR東日本)選手となりました。
山下選手と同じく駒澤大学出身の選手で、29歳の年齢で2時間5分台の記録を打ち立てました。
今回の走りなどをもとに世界陸上の代表選手として選出されるなど、今後の日本マラソン界をけん引する選手の一人になるのではないかと言われています。
そして、日本人3位に大迫傑(Nike)選手が入りました。
2時間6分13秒の好成績ではありましたが、ラスト勝負で山下選手らに一歩及ばずという結果となりました。
大迫選手は、復帰戦のNYCマラソンから4か月と短い期間で調整をすることを、自身でも「チャレンジ」と表現しており、新たな取り組みを試す場としても活用していました。タイムとしては悪くないものの、ラスト勝負で勝ちきれなかった結果を踏まえると、コンディショニングの面では改善の余地があったのではないかと考えられます。
全体としては日本人選手のうち、2時間5分台が2名、6分台が1名という結果であり、日本人選手のマラソンレベルが着実に上がっていることを実感できるような大会になったかと思います。
東京マラソンで現れたダークホース「山下一貴選手」とは?
今回、日本人1位になった山下一貴選手ですが、高校入学後から駅伝で活躍が目立つ選手でした。
山下選手は瓊浦高校という長崎にある陸上の強豪校出身で、現在チームメイトの*林田洋翔選手とは同じ高校出身となります。
*林田洋翔…全中・ジュニアオリンピック優勝、全国都道府県駅伝区間記録樹立など、2001年度生まれ世代のトップ選手
高校3年次の織田記念陸上では西日本ジュニアの部5000mBで見事優勝を飾っているなど、全国レベルの選手として注目されており、駒澤大学入学時からも未来のエースとして大きな期待を受ける選手となっておりました。
実際に大学入学後は2年生のころから箱根駅伝に出場するだけでなく、大八木監督から「ロードの走りの強さ」「粘り強さや安定感」を買われ、2年生から3年連続で華の2区を任されるなど、強豪の駒澤でもエースとして活躍してきた選手でした。
個人の成績としても、2019年3月の日本学生ハーフマラソンで1時間02分36秒の自己新記録で7位に輝くなど、大学陸上界でも活躍を続けており、大学時代には下記のとおりトップレベルの活躍を残してきました。
≪大学時代のベスト記録≫
・5000mベスト記録:13分55秒33
・10000mベスト記録:28分31秒89
・ハーフマラソン:1時間02分36秒
その後、地元長崎を拠点とする三菱重工陸上部(MHPS)に所属し、同郷の井上大仁選手や林田洋翔選手らとともに、さらに実力を伸ばしていきました。
実際に、社会人1年目からマラソン大会に出場を始めていきましたが、毎試合高いパフォーマンスを発揮しており、今回東京マラソンでの日本人首位を取るまでに成長していきました。
≪マラソン戦績≫
・2021年2月28日:第76回びわ湖毎日マラソン 2時間08分10秒 18位
・2022年2月27日:第10回大阪・第77回びわ湖毎日マラソン統合大会 2時間07分42秒 2位
・2023年3月5日:東京マラソン2023 2時間5分51秒 日本人トップ・日本歴代3位
「山下一貴選手」の走りを解説
ここからは山下選手の強さについて解説していきたいと思います。
山下選手が大会を振り返る際によく発言することとして「リズム」という言葉があります。
山下選手は長い距離でも自分のペースを守りながら一定のリズムで走れて、どのような大会でも安定した結果を残すことが出来ることが強みとなっております。
フィジカル面でも、内臓がとても強い選手なようで、どのような環境でもパフォーマンスを低下させることなく走れることも強みとなります。
また、陸上オタクとのことで、頻繁に過去の駅伝・マラソンを鑑賞するとのことで、様々な選手の分析をすることも得意なようです。
走りとしても上下動のないスムーズな走りのため、今回のような序盤がハイペース・途中から大幅なペースダウンをするような、ペースの上げ下げがある大会でも安定して走ることが出来たので、今回日本人トップを手にすることとなりました。
気になる今後について
山下選手は、さっそく試合後にMGCに向けた抱負を語っています。
「MGCでは優勝を目指して、パリ五輪で最高のパフォーマンスを発揮できるようにしたい」
着実にマラソンで好成績を残している山下選手には、目が離せないですね。
ぜひ、読者の皆様も山下選手を注目してみてください!
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